社会

底の浅さを思い知らされたGLAとの接触

底の浅さを思い知らされたGLAとの接触

その後もGLAからは何度も抗議文が送られてきた。内容証明も二度ほど来ている。
しかし、このときの大川はフライデー事件のときと違い悠然としていた。
「放っておけ。返答する義務はないのだから」と取り合おうとしなかった。
GLAの幹部がついに中原の自宅まで訪ねてきた。
事務所ではなく、中原の自宅へ行ったのはどういうわけだろう。
大川の「高橋信次」は元GLA信者である中原の影響によるものと見なしたからなのか。
とすれば、彼らは私たちが当時、見落としていたものを、敏感に察知していたことになる。
この訪問は、たまたま中原が留守だったために空振りに終わった。
しかし、その報せがもたらされると〈幸福の科学〉本部にはたちまち緊張が走った。
ついに衝突の時がきたか!と、誰もが顔を強張らせた。
あのときの大川の言い分には一理あったと思う。
「言論は自由。判定は読者がするのだから」
「主宰の佳子先生が来たなら私も会う。しかしナンバー2や3なら、会う必要はない。こちらもそうするまでだ」
霊言が言論と呼べるかどうかは疑問だが、そのホンモノ・ニセモノの判断は、読者にこそ任せるべきだというのは正論だろう。
さすが東大法学部と心の中で拍手を送った。
また、大川が相手教団のナンバー2や3と会談するというのは、GLAの下に〈幸福の科学〉を位置づけることになる。
つまらないことと言えば、確かにつまらない。
しかし教団という存在そのものがすでに、自分のほうが正しいのだ、エライのだと言いつづけなければならない宿命を持っているのである。
結局、何らかの形でGLAと接触しなければなるまいという結論に達した。
『谷口雅春霊言集』もあるから、同じトラブルが生長の家とも起こる可能性があった。
日蓮を祖とする日蓮宗、創価学会、空海の真言宗、親鸞の浄土真宗……可能性は至るところにあった。
もっとも、金持ちケンカせずとでも言うのか、ほとんどの場合は相手にもされなかったのであるが。
「総務局の渉外担当を窓口にしよう。関谷さん、ひとつ やってみてくれ」というので、総務局長だった私のところへお鉢がまわってきた。
大川をはじめ人生経験の乏しい人間がほとんどだったから、まがりなりにも ひとつの企業の社長として20年の間 酸いも甘いも味わってきた私が、
問題処理係になることが多かった。
だが、このときばかりはハタと困ってしまった。
基本的には、私も主宰と同じように考えてはいる。
しかし、高橋信次先生のことも心から尊敬している。
声を荒らげて批判しあうようなことは絶対にしたくない。
なんとか平和に、静かに話し合いたいというのが本心だった。
(どちらも、素晴らしい神理を打ち立てようとしているのだ。
話し合いによって、お互いに力を合わせ、ひとつになって進んでいきたい。
それこそが天上界にいらっしゃる信次先生の願いであるに違いない。
同じ神理を樹立するのだから、他と自を分け隔てるようなことを信次先生がされるはずがない)
だが、こんな理想論は、いとも簡単に押し流されてしまった。
88年の10月〈幸福の科学〉の代表として、高橋信次の実弟にあたる高橋興和と会うことになった。
新宿のホテル・サンルートで、27日の2時と日時も決まった。
はじめて見る信次先生の弟さんは、予想していた通り温厚な紳士だった。
「私は実の弟です。兄の性格は百も承知しています」と彼は念を押した。
「ほんとうに兄の霊が出てきたなら、すぐにでも飛んでいって話をしたいと思います。
でもねェ、関谷さん。違うんですよ。
巧妙に似せてはありますが、兄じゃないんです。私も残念なのですが」
とても真摯な話し方をされた。
肉親だからこそ言える実感がともなっていた。
私としては、抽象的な反論をするしかなかった。
「それは、あなたの主観ではありませんか。
ホンモノかどうかは、読者が決めるものだと思います。
イエス様の本だって、いっぱい出ている。
信次先生の本がたくさん世に出て教えが広まることは、喜ばしいことじゃありませんか」
「ほんとうの神理を樹立してくれるなら、ありがたいと思います。
でも、大川さんが書く本の内容は、絶対に兄のものではありません。
あのようなレベルで次々に本を出されては困るんです」
言うまでもなく私は、大川の霊言を信じていた。
かすかな疑いを抱きながら、それだけ余計必至になって信じようとしていた。
「内容に関して、違いを証明できるんですか」
「二つはハッキリしています。
関谷さんも気づきませんか。
一つは〔愛の波動が伝わってこない〕ということ。
愛を説く言葉は上手に並んでいるけれど、暖かみが伝わってきません。
ハートではなく頭で理解させ、うなずかせる感じです。
二つ目は〔冗談の言い方の違い〕です。
大川さんの冗談には品性がありません。
兄はあんな下品な言い方のできない人でした」
こう言われてしまうと、なお反論することができなかった。
感じや、身近な人しかわからない品性の問題を持ち出されては、マトモな議論にはならない。
それだけに、弟さんの言葉にはウムを言わせぬ説得力があった。
こちらとしては、こんなふうに逃げるしかないだろう。
「大川先生にも深遠な意図があると思います」
疑いが起こるたびに自分に言い聞かせていたのと、同じ言葉が思わず出てきた。
「少し長い目で見守ってください。
きっと信次先生のみこころが形となって表現されていくと私は信じています」
これはもう、霊言はホンモノじゃありませんと言っているに等しい。
しかし追い詰められていた私は、そんなことさえ気づかなかった。
これでは弟さんを説得できるはずもないのである。
「このままでは兄の悟りは、この程度の浅いものとして広まってしまうんです。
『新幸福論』や『愛の讃歌』はひどいものです。
あれでは猥褻書以下です。
何が神理ですか。
一人ひとりに対して、兄はもっと真剣な愛を持っていました。
そこのところを正しく伝えなくてはならないんです」
この猥褻さについては、私も違和感を持って読んだ一人だった。
たとえば『高橋信次の愛の讃歌』にはこういう一節がある。

※この出典は関谷氏の誤りで、正しくは『日蓮聖人霊示集』(土屋書店)の記述

〔ライオンが、この女性の上にのしかかって、この女性を犯しておるようであります。
……かわいそうにこの女性は、350年の間、こうしたライオンを中心とした人間に犯され続けたようであります〕

霊言をまるで信じない心理学者なら、著者の潜在的欲望の現れと見なすだろう。
確かに、高橋信次の口から語られたとは信じがたい。
もうひとつ『新幸福論』の一節を、少し長くなるが引用しよう。
人間は多かれ少なかれ いろんな願望を心に隠し持っているのだから、そのこと自体はとやかくいうつもりはない。
こういうものを高橋信次の霊言だと主張しなければならない、私の苦渋を察していただければいいのである。

〔それはね、男ってやっぱり自尊心の動物なんだ。
男から自尊心をとったら何も残らないんだよ。
「あなたって駄目ね」とかね。
「あなたね、全国平均は、だいたいあれよ、15分よ」とかね、「1時間は、やはり夜の勤めがあるのよ」とかね。
「平均はいくらぐらい、どうのこうの」とかね。
こういう男性というのはね、平均もってこられて比較されると、非常にいやなんだよ。
「他の人が1時間でしたって俺が3分で何が悪い」って「1分で何が悪い」って「あなた、すごく早いのよ」ってこう言われるけど
「あなた一分よ」って「なーに1分で何が悪い」って「だんだん時間を短縮する傾向にあるじゃないか」って
「新幹線だって速く走りやいいし、オーブンだって短い方がいいし、電気釜だって早く炊けるのがいいに決まっとるじゃないか、早くって何が悪い」って
「だけど隣りの奥さんに聞けば、だいたい二時間よ、一時間よ」とかね、いっぱい言われますね。
「あなたって肉体的欠陥があるんじゃないの」って、 こういろいろあるけれども、こういうことは決して言っちゃいけない。
特に男性というのは自尊心の動物だっていうことを忘れちゃいけないね。
だから平均だとかね、隣の旦那さんとかね、うちの親戚の人とかそんなの出してきて、比較しちゃいけない。
女性はしがちだよ。
全国統計なんか知らないくせに、ちょっと聞いたことしゃべるからね。
男性の肉体的欠陥、絶対言ってはいけない。
「体形が悪い」とかね。
「あなたは、夜のがへタ」だとかね、絶対これを言わない。
これ大事です。
なぜかって、男の自尊心を傷つける。
そうすると外へ出てもうまくいかない。
家の中でも自信がなくなる。
駄目になってきますね。
このところ特に気を付けてください。
胸に手をあてれば、心当たりある奥さんは九割以上いるはずです。
言われたことがあるっていう旦那さんは十割ぐらい居ます。
だから僕もこれだけ力を入れている意味を、みなさん考えてくださいね。
なぜ高橋信次がそれだけ言うか。まあ考えてくださいよ。〕

話し合いは二時間ほどつづいたと思う。
私の勉強不足に、弟さんは物足りなさを感じているようだった。
勉強不足とは、宗教界全般についての知識のなさである。
そうなのだ。
〈幸福の科学〉の多くの会員と同じように、私も宗教に対してはほとんど何も知らず大川の本と出会った。
そして、入会後に読むものといえば、ほとんどが大川の著作である。
それもそのはずで「おれの本以外に本が読めるなら読んでみろ」とでも言わんばかりに、立て続けに本が出るのである。
会に帰って会談の報告をしたが、ありのままを言うことはできなかった。
大川のためにも自分のためにも、適当にお茶を濁すしかない。
あらましを聞いた大川は「もう煩くは言ってこないだろう」と安心した様子だった。
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